Solution to Traffic Accidents交通事故解決ガイド

交通事故の損害賠償にあたり重要なこと⑪「同じ交通事故で、同じ被害者について、人損と物損が発生した場合に、消滅時効は人損と物損で別々に考えるべきか?」

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【ご質問】
交通事故で、お怪我をされると同時に、自動車等も損傷した場合、
消滅時効の管理は、
同じ事故による損害として、まとめて考えればよいのか?
それとも、人損と物損で別々に考えればよいのか?
 
 
【弁護士の回答】
人損と物損を別々に考える必要があります。
 
例えば、
人損の治療中や、後遺障害等級認定申請中に、物損の消滅時効が完成してしまう場合が考えられます。
 
この点は、弁護士でも、きちんと理解していない弁護士もしばしば見受けられますので、注意が必要です。
(稲葉弁護士が、他の弁護士に聞いてみたところ、「同じ事故による損害なのだから、一緒だと思う。」との答えが返ってきました。)
 
 
【最高裁判所第3小法廷令和3年11月2日判決(最高裁判所民事判例集75巻9号3643頁)】
被害者運転の大型バイク(被害者が所有)が、神戸市内の交差点で、転回中、同じく転回しようとした普通乗用自動車に接触され、転倒した交通事故事案です。
被害者は、怪我をすると同時に、バイクが損傷しました。
 
不法行為による損害賠償の請求権は、「損害及び加害者を知った時」から消滅時効がカウントされますが(民法724条)、人損の場合は、損害を知った時とは、症状固定時と考えるのが通常です。
 
本件最高裁判所判決の事例では、
症状固定時からカウントすると時効期間が完成していなかったのですが、
被害者が、加害者と車両損傷を知った時からカウントすると時効期間が完成していました。
 
第1審の神戸地方裁判所第1民事部は、物損も含めて、損害全体に対して、消滅時効が完成していないと判断しました。
(神戸地方裁判所令和元年11月14日判決、担当裁判官:岸本寛成判事)
 
第2審の大阪高等裁判所第1民事部も、
被害者の「損害賠償請求権についての時効の起算日である『損害』『を知った時』・・・とは、被害者が損害全体について賠償請求が可能な程度に知った時と解するのが相当であり、本件事故に関しては・・・症状固定と診断された日である」とし、症状固定時から考えると、物損も含めて、時効は完成していないと判決を下しました。
(大阪高等裁判所令和2年6月4日判決、担当裁判官:裁判長佐村浩之判事、松山昇平判事、天野智子判事)
 
しかし、最高裁判所は、
「車両損傷を理由とする損害と身体傷害を理由とする損害とは、これらが同一の交通事故により同一の被害者に生じたものであっても、被侵害利益を異にするものであり、車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権は、身体傷害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権とは異なる請求権である」と解し、
「車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権」の消滅時効は「被害者が、加害者に加え、上記車両損傷を理由とする損害を知った時から進行するものと解するのが相当である」と判断しました。
そして、
被害者の損害のうち、
物損と物損に対応する弁護士費用の請求については、消滅時効の完成を認め、請求を棄却しました。
(担当裁判官:裁判長長嶺安政最高裁判事、戸倉三郎最高裁判事、宇賀克也最高裁判事、林道晴最高裁判事)

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