交通事故の損害賠償にあたり重要なこと⑨「時効期間の改正」
ガイド一覧へ
【現行法(令和3年12月15日現在)における交通事故に係る損害賠償請求権の時効の定め】
物損事故
:損害及び加害者を知った時から3年以内、かつ、事故発生時から20年以内
(※1)
人身事故(怪我をした事故、後遺障害が残った事故、死亡事故)
:損害及び加害者を知った時から5年以内、かつ、事故発生の時から20年以内
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
民法第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
民法第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
【注釈】
※1 ここでいう「物損事故」とは、文字どおり、人の生命や身体の侵害がない物損のみの事故のことです。
例えば、怪我はないのだけれども、自動車に傷がついたような場合です。
交通事故の実務経験上、警察では、実際にはむち打ち症などの受傷、場合によっては骨折などのかなり大きな受傷をした事故であっても、事件処理の手間を省くためかと推察しますが、「保険会社がついているからそちらで補償されるでしょう。(それでも)人身事故の届け出はするのですか。」と、人身事故の届け出をしないで解決することを暗に示唆することが多々あります。
このような、実際には人身事故だけれども、便宜上、人身事故としての届け出をしていない場合は、警察の記録の上では物件事故ですが(交通事故証明書には「物件事故」と記載されます。)、本解説でいうところの「物損事故」には該当しません。
※2 経過措置が定められています。
※3 通常の交通事故と異なり、事故の加害者と被害者の間に契約があるなど、加害者が被害者に対して義務を負っていると考えられる場合には、不法行為責任のみならず債務不履行責任を追及することができる場合も考えられます。
この場合、債務不履行責任については、別途、債務不履行責任の時効の定めがあります。
※4 時効の起算点が問題になる場合や、時効が中断されたと考えられる場合もあります。
詳しくは、弁護士に法律相談されることをお勧めします。