弁護士費用特約の実務⑤~各論「東京海上日動火災保険株式会社」
ガイド一覧へ
東京海上日動火災保険株式会社の弁護士費用等補償特約の特徴は、
①弁護士費用が最低30万円は支払可能
②弁護士費用の算定が比較的、契約者寄りに感じられる
③タイムチャージ制が定められていない
の3点と思います。
(2022年1月1日~始期契約のトータルアシスト自動車保険
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/service/auto/covenant/ )
※①は消費税を除きます。
※②は個人の感想です。
【①弁護士費用が最低30万円は支払可能】
東京海上の約款における弁護士費用は、
着手金:最低10万円は支払可能
報酬金:最低20万円は支払可能
となっています。
この規定が威力を発揮するのは、賠償額が比較的少額になる事件が典型です。
例えば、
追突事故によるむち打ち症で3か月通院し、賠償金額の交渉をして示談解決、といった場合です。
この場合でも、
弁護士費用から保険金として30万円は支払われますので、弁護士に依頼しやすいものと思われます。
特に、当初は示談で終わると思っていたのに、加害者側(保険会社)が頑なで裁判になってしまう場面でも、
「ある程度の弁護士費用が確保されている」ことから、将来的に裁判になる可能性も込みで、弁護士費用の自己負担なしに弁護士依頼できることも多いのではないかと思います。
※ もっとも、ご依頼される方とご依頼をお受けする弁護士との相対の契約になりますので、事件の内容や依頼される方や弁護士の考え方次第となります。
この場面は、あまり知られていないことですが、
「保険会社によって異なり」、保険会社によっては、同じような事件でも、10万円強の保険金支払に止まる場合もあります。
この点、東京海上の弁護士費用特約は、契約者の方にとって有利といえるでしょう。
【②保険金の算定が比較的、契約者寄りに感じられる】
先に断っておきますと、あくまで個人の感想です。
また、熊本や近県のサービスセンターとやり取りした経験によるものです。
同じ保険会社の同じ保険契約であっても、実際のところ、担当者やセンターによって、扱いが変わることがしばしばありますので、地域や担当者によっては、異なる結果になるかもしれません。
簡単にご説明すると、
被害者様が主張される後遺障害・過失割合・損害額など(最終的には、全て賠償額の問題となります。)は、「あくまで被害者様の主張」になります。
示談交渉の場合は、相手方がいますので、相手方(多くの場合は、実質的には保険会社)と合意に達する後遺障害・過失割合・損害額などが異なることは多々あります。
裁判になっても、加害者側(保険会社側)はいろいろな主張をしてきますし、「評価をする人によっても」「ばらつき」が生じます。
例えば、
小学生の方の顔面に傷痕が残ってしまった場合、将来の収入減少があると考えるのか、あるとしてどの程度の収入減少があると考えるかは、裁判官によっても考え方が違います。
もともと、はっきりとは分からない「この交通事故がなければあったはずの未来」を、
無理矢理、現在において「金銭に換算する」ので、どうしてもブレが生じます。
弁護士費用特約の場面では、
例えば、被害者様が「自賠責保険では後遺障害等級が認定されなかったが、自分には症状が残っているから後遺障害等級が認定されるべきだ。」と裁判を起こす場合に、
加害者側の保険会社のみならず、被害者様ご自身の保険会社が、
「後遺障害が認められる可能性は低いと思うので、後遺障害がないことを前提とした弁護士費用の限度で保険で支払う。」
「それでも、後遺障害があると主張するかは、依頼される弁護士と話し合って下さい。」
と主張する場合などが考えられます。
また、
弁護士費用以外の「実費の問題」もあります。
実費も「その多くが弁護士費用特約で対応してもらえる」のですが、
例えば、医学鑑定費用のような高額な実費が必要な場合、事案にもよりますが、
「弁護士費用特約の保険金として鑑定費用などの実費を払ってくれるか」という問題があります。
交通事故弁護団の会員弁護士からの報告ですが、
某ネット系損保から、鑑定費用について○円までしか支払えないと言われた事件がありました。
【③タイムチャージ制が定められていない】
この点は、弱点と思います。
タイムチャージとは執務時間に応じて弁護士費用が発生する、いわば従量制の報酬の定め方です。
タイムチャージ制が威力を発揮するのは、典型例として、
少額の物損事件で過失割合を争って裁判になるような場合があります。
具体例を挙げると、
交差点における出合い頭衝突で、こちらの車両の修理代が40万円、相手の車両の修理代が30万円で、過失割合を争って裁判になるような場合が考えられます。
裁判になる以上、手間と時間はかかりますが、経済的利益が小さい場合です。
もっとも、
いなば法律事務所の取扱案件で、過去に、東京海上でもタイムチャージ制で弁護士費用特約を適用して頂いたことがありました。
但し、そのころは、約款で弁護士費用の具体的な定めもなかった時代ですので、なかなか現在では厳しいかもしれません。