物損の事故解決にあたって③~車両所有者でなくても、修理費用相当額の損害賠償請求は可能なのか?(続)
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(物損の事故解決にあたって②の続きとなります。)
東京地方裁判所民事第27部(交通事故の専門部)の裁判官による、平成28年の講演では、下記のとおり、論じられています。
東京地方裁判所交通部の考え方は、実務的に非常に影響が大きく、
下記のとおり考えておけば、多くの場合に対応できるものと思われます。
(担当:川原田貴弘裁判官。公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」2017年版・下巻(講演録編)55頁以下収録)
【(2) 使用者が修理をせず、かつ、修理費を支払わずに請求する場合その1~「所有権留保特約付売買の買主の場合」】
川原田裁判官の上記講演では、
使用者が、
①加害者の過失によって、自らが使用する車両が損傷したこと、
②当該車両の使用者が所有権留保特約付売買の買主であること、
③当該車両の修理費相当額、
④自らが当該車両を修理し、かつ、修理費相当額を負担する予定があること、
を主張立証すれば、使用者の加害者に対する民法709条に基づく修理費相当額の損害賠償請求権が認められる、
と結論づけています。
理由は、
(所有権留保特約付売買の法的性質については様々な考え方があるところ、少なくとも)
売主は、未払の代金債権を担保する趣旨で所有権を留保しており、買主(使用者)は売主に対して担保価値を維持する義務を負っているからです。
民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
【参考裁判例】
川原田裁判官の上記講演では、
神戸地方裁判所平成8年6月14日判決
東京地方裁判所平成15年3月12日判決
京都地方裁判所平成24年3月19日判決
東京地方裁判所平成26年11月25日判決
が、所有権留保特約付売買の買主(使用者)に、修理費相当額の損害賠償請求権が帰属するか否かを判断した裁判例として、紹介されています。
(以下、次回に続きます。)