Solution to Traffic Accidents交通事故解決ガイド

交通事故後、こんなときどうなる⑤~交通事故で後遺障害を残した被害者様が、示談前にお亡くなりになった場合

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【どのような点が問題なのでしょうか?】
交通事故に遭ってしまい、治療をしても後遺障害が残った被害者の方が、加害者との賠償問題を解決させる前(例えば、示談する前)に、事故とは別の原因によって死亡してしまった場合、将来の収入減少などに対する損害(逸失利益)はどうなるのでしょうか。
病気や突発的な身体の不調で死亡した場合、他の交通事故に遭って死亡した場合、考えたくないですが自殺した場合などが考えられます。
 
交通事故の賠償費目のうち、「逸失利益」というものがあります。
働くことが可能と考えられる期間(事案によりますが、一般的には67歳までとされることが多い。)について、後遺障害の程度などに応じて、収入減少を算定していくのですが、死亡した後については、働くことがあり得なかったとして、逸失利益は認められないのでしょうか?
 
 
【最高裁判所の考え方は「継続説」です】
最高裁判所は、基本的に、就労可能年齢(一般的には67歳)までの全期間について、逸失利益を算定すべきである、との立場を取っています。
いわゆる「継続説」という立場です。
もう少し、詳しくみていきましょう。
 
 
【考え方の対立~切断説vs継続説~裁判例も分かれていました】
①切断説は、後遺障害の逸失利益は、死亡時までに限定される、という考え方です。
将来は不確実であり、被害者が、交通事故に遭わなければ働いたであろう期間は、正確には分かりません。
あるはずだった未来は分かりませんが、それでも、加害者が支払うべき賠償額を算定しなければなりません。
逸失利益は、あくまで、損害賠償額を算定するにあたり、「このくらい働いたであろう」と擬制して、計算を行っているに過ぎないのです。
ところが、ここで被害者が死亡した場合、死亡時までしか働けなかったことが確定しますので、この時点まで逸失利益を算定すればよい、という考え方です。
 
②継続説は、後遺障害の逸失利益は、死亡時までに限定されず、死亡後であっても後遺障害の存続が想定でき、仕事をすることが可能であったと考えられる期間については、逸失利益を算定すべきである、という考え方です。
交通事故発生時点で、損害は一定の内容のものとして発生しているのであるから、後発的な事情を考慮すべきではない、加害者が本来負っていた賠償責任を免れさせるのは不当である、と考えます。
 
かつて裁判例は、切断説に立つものも継続説に立つものもありました。
つまり、「どの裁判官が担当するかで、賠償額が大きく変わってくる」という状態にありました。
その中で発生したのが、「貝採り事件」です。
 
 
【「貝採り事件」~地方裁判所と高等裁判所で全く違う結論に!】
交通事故によって後遺障害を負った被害者(症状固定時44歳)が、海で貝採りをしていたところ、心臓麻痺で死亡してしまった事件です。
 
裁判になりましたが、
東京地方裁判所(第一審)は、継続説に立って、後遺障害逸失利益を67歳までの943万円あまり、認めました(東京地方裁判所平成4年3月26日判決)。
 
ところが、
東京高等裁判所(控訴審)は、切断説に立って、後遺障害逸失利益は、症状固定日から死亡までの逸失利益3万円弱しか認めませんでした(この事件において、症状固定日から心臓麻痺による死亡日までは、あまり間がありませんでした。)。
 
この事件の結論は、最高裁判所の判断に委ねられることになりました。
 
 
【最高裁判所は継続説に立つことを示しました】
最高裁判所は、「貝採り事件」において、
「交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。」と判断し、継続説を採用しました。
そして、就労可能年齢67歳までの全期間について逸失利益を算定すべきである、との結論を示しました(最高裁判所平成8年4月25日判決、民集50・5・1221)。
 
更に、最高裁判所は、上記判決の翌月、平成8年5月31日にも、上記判決と同様に継続説に立つことを明示した判決を示しました(最高裁判所平成8年5月31日判決、民集50・5・1323)。
最高裁判所が、継続説に立つことは確定したと考えてよい、と言われています。
 

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