カルテを読み解く⑨~TFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷
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【TFCC(三角繊維軟骨複合体)とは】
Triangular:三角の
Fibrocartilage:繊維軟骨
Complex:複合体
手関節の尺側(小指側)にある三角形の組織で、繊維軟骨とその周囲の靭帯構造からなる複合体です。
【TFCC(三角繊維軟骨複合体)の役割】
・手関節尺側(小指側)の衝撃を吸収するクッションの役割
・手首の運動を助ける役割
などがあります。
【どういう時にTFCC損傷が発生するのか?】
・転倒など強く手をついた際や、手関節から前腕に強いねじれの外力が加わった際などに発生すると言われています。
・加齢性の変化などで、軽微な外傷を機に、もしくは外傷がなくても発生することもあります。
交通事故では、例えば、
バイクや自転車の事故で、転倒して地面に強く手をついたり、手首を強くぶつけたりした場合、
自動車のハンドルを握ったまま事故に遭い、手首に強い力がかかった場合
などに発生することが考えられます。
【TFCC損傷の症状】
主な症状としては、
手関節尺側(小指側)の痛みや、前腕回内外可動(きらきら星の振り付けのように手をひらひらさせる運動)域の制限などがあります。
タオル絞りやドアノブの開け閉めなど、手関節のひねり動作の際に疼痛を訴えることが多く、音として感知することや、人にものを渡す際などに手が抜ける感じがすることもあります。
治療としては、安静、消炎鎮痛剤投与、サポーター固定、ギプス固定などの保存療法と、
ときに、鏡視下TFCC部分切除術や尺骨短縮術などの手術療法がおこなわれることもあります。
【TFCC損傷と後遺障害】
神経症状として
・12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
・14級9号「局部に神経症状を残すもの」
が問題となります。
手関節の可動域制限があるときは、上肢の機能障害も問題になり得ます。
なお、
MRI検査や関節造影などでTFCC損傷があることがきちんと立証できることや、
相当因果関係を否認されないために、交通事故の直後からきちんと症状を伝えておくことが大切です。
【参考文献】
中村耕三監修「整形外科クルズス」254~255頁(南江堂、改訂第4版、2009年)
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS「手関節の尺側部の痛みを呈する疾患」
一般社団法人日本手外科学会広報委員会監修・エーザイ株式会社制作「手外科シリーズ 27.TFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷
ほか