カルテを読み解く⑤~SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)
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【下肢伸展挙上テスト(Straight Leg Test:SLRテスト)】
患者をあおむけに寝かせ(仰臥位)、
片方の下肢を、膝をまっすぐ伸ばしたまま(完全伸展位)、挙上します。
反対側の下肢の股関節、膝関節はまっすぐ伸ばしたまま(完全伸展位)にします。
正常では、80°以上に疼痛なく挙上できますが(文献によっては70°程度とするものもあります。)、坐骨神経に障害がある場合、大腿後面から下腿後面に疼痛が生じ(SLR陽性)、下肢を上げることができません。
陽性角度と疼痛部位を記載します。
(椎間板ヘルニア患者の場合、30°も上がらないこともあります。)
【坐骨神経痛】
腰椎疾患からの下肢痛は、坐骨神経痛とよばれ、神経が椎骨や椎間板に圧迫されて、下肢や臀部に放散するしびれや痛みが生じます。
坐骨神経痛の原因となる腰椎疾患の代表的なものには、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症があります。
なお、その他の坐骨神経痛の原因としては、末梢血行障害、末梢神経障害(糖尿病性、アルコール性、薬剤性など)、複合性局所疼痛症候群などがあります。
【ブラガードテスト(Bragard Test)】
SLRテストが陽性の場合、挙上した下肢を少し下げた位置で、足関節の背屈により下肢痛を誘発できる場合を陽性とします。
SLRテストに加えて行う必要があるかですが、例えば、SLRテスト80°陽性のとき、これが坐骨神経痛であるかの確証が乏しいときに、加えて、このテストを試みるのもありかもしれない、という意見があります。
【交通事故との関係】
追突事故などで腰椎捻挫を受傷され、腰痛や下肢の痺れを訴えておられる被害者の方がよくおられます。
これらの被害者の方について、交通事故の被害者側にたつ弁護士としては、腰椎捻挫後の腰痛や下肢の痺れにつき、例えば、後遺障害等級
・12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
・14級9号「局部に神経症状を残すもの」
の認定がされないか、検討していくことが多々あります。
症状固定時に、これらのテストを医師にしていただき、陽性となった場合に、後遺障害診断書に記載してもらうことで、より後遺障害等級が認定される方向の判断要素となるものと思います。
もっとも、熊本市内を中心に、熊本県内のさまざまな病院が作成した後遺障害診断書を見てきた弁護士の経験からすると、同じ熊本市内(熊本県内)の病院であっても、かなり細かく様々な検査をしていただける病院と、残念ながら、ほとんど何も見ていないのではないかと思われる病院との落差がかなりあるのが現状です。
【参考文献】
日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野 脊椎班 著「脊椎脊髄ハンドブック」66~67頁(三輪書店、第2版、2014年)
栗宇一樹ほか編「交通事故におけるむち打ち損傷問題」54頁(保険毎日新聞社、第2版、2012年)
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS「下肢痛」
西多摩医師会報第225号(平成3年9月)
ほか