カルテを読み解く①~ティネル徴候
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【ティネル徴候】
(チネル徴候、Tinel徴候、Tinelサインなどの表記のこともあります。)
ティネル徴候は、神経傷害部を叩くと、その神経の支配領域に「限定」して、ビリビリ感に似た電撃性の放散痛が生じるものです。
【どう読み解くか?】
ティネル徴候は、神経再生が順調に進んでいるかを調べるのに有用とされています。
というのは、ティネル徴候が時間の経過とともに、「末梢に移動」する場合は、再生が順調に進んでいることを示すからです。
この再生速度は、1日あたり1~2ミリと言われています。
一方、ティネル徴候が1か所に止まっており、末梢に移動していかない場合は、神経再生が進んでいないことを示します。
【注意点】
注意することとしては、
・叩いた部位が痛いのみだったり、痛みの放散部位が限定されていないものはティネル徴候と捉えてはならない。
・叩き方が強く、神経に刺激が加わったため、神経断裂した部位よりも数cm末梢の部位にティネル徴候が存在するかのように捉えられることがある。
・受傷後4~6週間はティネル徴候が出現しないことがある。
などが挙げられます。
【実用例】
交通事故の訴訟では、加害者側(保険会社側)の弁護士は、カルテ(診療録)の開示を求めてくることが多いです。
そして、熊本地方裁判所を中心に、交通事故訴訟を多く取り扱ってきた私たちの経験上、裁判所は、カルテの開示を基本的に認めます。
病院から開示された、交通事故の被害者(患者さん)のカルテにティネル徴候の記載があり、ティネル徴候が1か所に止まっていれば、神経再生が進んでいないということになります。
交通事故被害者側の弁護士としては、被害者に後遺障害が残っていることを示す有力な根拠として主張立証できると考えられます。
一方、ティネル徴候が末梢に向けて進んでいる、すなわち神経再生が進んでいる場合には、交通事故被害者側の弁護士としては、ティネル徴候を、治療の実があがっていること、すなわち、その期間においては、治療が必要かつ相当であり、症状固定の状態に達していなかったと主張立証しやすくなるものと考えられます。
【参考文献】
中村耕三監修「整形外科クルズス」394~395頁(南江堂、改訂第4版、2009年)
公益社団法人日本整形外科学会ホームページ
ほか