交通事故における参考裁判例~鹿児島地方裁判所鹿屋支部令和4年2月7日判決②
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交通事故における休業損害をめぐる裁判例③で、ご紹介した、鹿児島地方裁判所鹿屋支部令和4年2月7日判決(交民55・1・126)について、
企業損害以外にも、
裁判等で争っていく上で、参考になると考えられる判断がありましたので、以下、ご説明していきます。
② MRSAの院内感染による高次脳機能障害
本件では、寛骨臼骨折の手術の際に、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に院内感染し、その結果、高次脳機能障害に至ったという事情がありました。
加害者側は、
・被害者は、MRSAに感染し、感染性心内膜炎に罹患し、細菌性脳動脈塞栓症をも併発して、脳梗塞・脳出血を起こして高次脳機能障害に至った。
・被害者がたどった経過は通常の因果の流れを逸脱しており、事故による受傷と高次脳機能障害との間の相当因果関係はない。
と主張しました。
これに対して、鹿児島地方裁判所鹿屋支部は、
・被害者の高次脳機能障害は、事故後の手術に伴いMRSAに院内感染したことが原因と考えられる。
・被害者の寛骨臼骨折は、骨頭壊死を考慮すると早急な手術を要する状態にあった。
・手術に伴いMRSAに院内感染する危険性は、きわめて低い、とは認められない。
・病院の院内感染対策に不備があったとうかがわせる具体的事情は認められない。
・以上より、被害者の事故による骨折は、治療の際にMRSAに院内感染する危険性を有するものであり、その危険が現実化して高次脳機能障害に至ったといえるから、事故と高次脳機能障害との間には相当因果関係がある。
と判断しました。
(③以下は、追って、ご説明予定です。)