Solution to Traffic Accidents交通事故解決ガイド

交通事故の裁判における攻防③ 保険会社側の医学意見書の証拠提出

ガイド一覧へ

【交通事故の裁判における保険会社側の主張立証活動の流れ】
交通事故の裁判における実務の動きは、常に変動していますが、
最近(令和5年7月10日時点)でいうと、
 
保険会社側の弁護士は、
①診療録等の文書送付嘱託申立を行い(裁判所はだいたい採用します。)、
②診療録等の記載を検討して、症状固定日や休業の必要性、後遺障害の有無などを争う、
という流れが多いです。
 
保険会社によっては、その後、
③医学意見書を取得して証拠提出する
ことも多いです。
③まで行うかは、保険会社により頻度が異なり、
例えば、熊本の場合、東京海上日動火災保険株式会社の場合は、医学意見書を証拠提出してくることが多い印象です。
 
 
【医学意見書の証拠価値はどうなっているのか?】
専門家である医師の手による医学意見書が証拠提出された、となると、インパクトは大きいものがあります。
では、その証拠価値はどのようなものなのでしょうか?
やはり、勝敗を決する威力があるものなのでしょうか?

あくまで、稲葉弁護士の感想となりますが、以前は、医学意見書の証拠価値は、医師という専門家が作成している、ということだけで、高いものがあったと思います。
医学鑑定も含めると、内容薄弱な医学意見に基づいて、1000万円以上の賠償額認定へとつながる後遺障害等級が認定されたことも目にしました。
 
しかし、昨今の交通事故訴訟では、医学意見書が証拠提出されることが、以前と比較して、非常に多くなりました。
その提出場面も、医学意見が必要な事柄に限って医学意見書を取得して証拠提出するというのではなく、
どのような事案でも、とりあえず医学意見書を取得して証拠提出する(そして、医学意見書の内容を、ほぼなぞった内容の主張を弁護士が書面で行う。)ということも散見されます。
 
医学意見書の内容も、画像を読影して、専門家として説得力のある論証をしている意見書もあります。
しかし、診療録にある保険会社側に都合のよい記載を適宜指摘して、かなり主観的な結論を導いている、
換言すると、弁護士が診療録に基づいて主張する書面と大差なく、違いは医師の署名捺印があるだけ、と感じられるものも多々、見受けられるのが実情です。
交通事故の被害者側を多く扱う弁護士としては、正直、保険会社がお金を支払って取得した意味がどこまであるのか、相手方ながら疑問を覚えるケースも散見されます。
 
ビジネスとして医学意見書の作成を手掛ける会社も増え、弁護士のもとに、医学意見書を扱う会社からの営業ダイレクトメールが届くことも増えました。
 
被害者側が、医学意見書を取得して証拠提出することも、弁護士費用特約が普及した現在においては、以前よりも、難しいことではなくなりました。
結果として、訴訟において、内容が正反対の医学意見書が飛び交う、ということもあります。
 
これらの動きと反比例して、
良くも悪くも、裁判所における医学意見書の評価は下がったな、というのが、稲葉弁護士の印象です(あくまで私見です。)。
 
もちろん、医学意見書があれば一応の証拠にはなりますし、
特に、説得力のある医学意見書は、有利不利を問わず、強力な証拠となりますので、油断は禁物ですが、
保険会社側から、被害者側に不利な内容の医学意見書が証拠提出されたからといって、「医学意見書」だから証拠価値が高いということはありませんし、
裁判所は、以前にも増して、医師の署名捺印がある意見だから正しい意見だ、という目では、見ていないと思われますので、内容をきちんと精査して、論理的な反論をすれば十分に戦えるものと思われます。
稲葉弁護士の経験でも、医学意見書の内容に拠らない判断を裁判所がしていることを多々、目にしています。
(今回は、保険会社側が証拠提出した医学意見書について述べましたが、被害者側が取得した医学意見書の場合も、同様です。)

前のページへ

交通事故被害は無料相談のご予約を!

相談料・着手料0円

弁護士による示談書無料診断も行っています!

  • 096-342-7707 平日9:00~19:00/土曜12:00~17:30096-342-7707 平日9:00~19:00/土曜12:00~17:30
  • メールでのお問い合わせ 24時間受付中!メールでのお問い合わせ 24時間受付中!

弁護士費用特約がある場合は
特約保険会社に相談料を請求させていただきます。

ページトップヘ