事例332
2017/04/19
被害者:40代女性、熊本市中央区在住
傷害内容:外傷性頚部症候群、外傷性腰部症候群など(むち打ち症)
交通事故の態様:交差点で右折待ちの車の左側を通過した際の接触事故
当方の過失割合:相手方が当方過失20%と主張→当方過失0%で和解
《事案の概要》
被害者様が、交差点で右折待ちの車の左側方を通過しようとしたところ、右折待ちの車が右折をあきらめて直進しようとしたのか左側に進路変更をしてきて、被害者様の車と接触した交通事故です。
相手方は、被害者様が人身事故にしたことに立腹したのか、任意保険使用を拒否しました。
そこで、被害者様はやむなく、ご自分の人身傷害保険で治療を始められました。
ところが、人身傷害保険の保険会社A社は、途中から治療費の支払を拒否しました。
治療費の支払を途中から拒否した理由は不明ですが、人身傷害保険の保険会社Aが、自賠責保険に求償したところ、自賠責保険が求償に応じなかったからではないかと推測されます。
そのため、被害者様は大変お困りになり、自費で治療されながらも、知人の伝手をたよって、いなば法律事務所にご相談されました。
何とかして欲しいと、強くご依頼を希望され、弁護士依頼となりました。
《相手方弁護士との交渉》
相手方は弁護士をつけていました。
稲葉弁護士にて、相手方弁護士と交渉しましたが、相手方弁護士は、「当方の過失が2割ある」との主張をしてきました。
そもそも、本件事故は、右折待ちをしていた相手車の車が、急に左側に進路変更をしたことにより発生したものです。
また、事故後の相手方の対応には疑問が多々ありました。
話し合いでは、きちんとした解決ができないと判断されましたので(もともと話し合いができる可能性は低いと判断されましたが)、正当な解決を求めて、熊本地方裁判所に訴訟提起しました。
《訴訟における攻防》
相手方は、訴訟において、
①当方にも2割の過失が生じる
②せいぜい3か月も通院すれば十分だった
などと主張してきました。
当方は、
①については、類似事例の裁判例を調査の上、本件のような事故では、当方の過失があるとは評価できない、と主張しました。
②については、診療録上の記載などから治療効果があることが分かるので、3か月で治療が十分ということはない等の主張をしました。
訴訟における双方の主張立証状況を踏まえ、裁判官から、
①当方の過失は認められない。
②治療は交通事故発生から約10か月半の間は妥当である。
旨の和解案が示されました。
内容的には、ほぼ当方の勝訴といってよいと思います。
《訴訟上の和解による解決》
当方と相手方の双方が、裁判官が示した和解案に応じる形で、無事、和解での解決となりました。
・当方の過失がないことを前提に、
・被害者様の家事など主婦業に差し障りがあったこと(主婦としての休業損害)や
・怪我自体の慰謝料(傷害慰謝料)など、
合計約160万円を相手方に支払ってもらう形で和解ができました。
事件の終了時に、ご本人様からは、かなり高価そうなお菓子を頂戴し、たいへん喜んで頂くことができました。
弁護士としても、ご依頼により、良い結果を出すことができ、たいへん嬉しく思いました。
《弁護士のコメント》
本件事故において、相手方が、自分の保険を使わせないとした対応には、かなりの疑問がありました。
また、被害者様がかけておられた人身傷害保険の保険会社A社ですが、このような時のために、被害者様方が、保険料を支払ってかけておられるものです。
保険会社A社は、交通事故に力を入れている弁護士の間では、支払が悪いことでかなり有名な会社ですが(あちこちでいろいろな事案が耳に入って来ます。)、自社利益優先の姿勢が強くうかがわれ(自賠責保険が治療費の求償に応じれば、自社の治療費負担はないところ、自社に負担が生じそうになったので人身傷害保険の支払を停止したのではないかとの疑いが生じました。これでは、これまで、何のために保険料をA社に支払ってきたのか分かりません。)、弁護士としては、強い憤りを感じました。
なお、相手方の任意保険会社や自賠責保険の保険会社は、契約者である相手方が支払を拒絶したための支払拒絶と推測され、会社自体の問題というのはさほどないように思います。