事例1050
交通事故訴訟★後遺障害等級9級の男性・熊本県在住・弁護士依頼前「約3645万円」→依頼後「約5100万円」として訴訟上の和解解決(既払い金控除済み)
被害者:熊本県内在住の男性
傷病名:脳挫傷、外傷性くも膜下出血など
後遺障害等級:9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
保険会社の示談提示額:既払い金を除き「約3645万円」
弁護士依頼後の回収額:既払い金を除き「約5100万円」
《弁護士の活動~熊本地方裁判所への訴訟提起→裁判上での和解解決》
保険会社の担当者が、かなり強硬姿勢であった事案です。
そのため、訴訟提起による解決を選択しました。
訴訟において、
保険会社側の弁護士は、
「脳機能の低下として妥当な後遺障害等級は12級程度である」
「シートベルト未装着などの理由があるから40%の減額がされるべき事案である」
「幼年期に熱性けいれんを起こしたことがあり、50%の素因減額がされるべきである」
などと、激しく争ってきました。
裁判上、加害者側・被害者側の双方から、内容の異なる医学鑑定書が提出されるなど、本件は、難易度の高い訴訟でした。
詳細は伏せますが、
弁護士にて、証拠取得を含めた、丁寧な主張立証活動を行った結果、
熊本地方裁判所から、
「後遺障害等級は9級が妥当であり、被害者は現在も会社勤務をしているが、労働能力を35%喪失していると評価するべきである」
「シートベルト未着用の減額は10%にとどまる」
「幼年期に熱性けいれんを起こした事実はあるが、素因減額は認めない」
等といった判断のもと、
加害者側(実質的には保険会社側)は、
既払い金を除き「約5100万円」を支払うべきである、
といった内容の和解案が出されました。
和解成立にあたっても、紆余曲折があったのですが、
最終的には、保険会社側も、裁判所の和解案を受け入れ、
保険会社の示談提示額「約3645万円」→和解額「約5100万円」となる形で、事件解決となりました。
※ 裁判上で和解した、といっても、被害者様が加害者と仲直りする、という意味ではなく、裁判所の関与のもと(多くは裁判所が算出した金額で)双方が金額等に合意した結果、事件解決とする、といった意味となります。
《いなば法律事務所の弁護士の視点》
高次脳機能障害は、受傷態様が大きく、事故後の意識障害や画像所見があっても、
明らかに植物状態であるような場合はともかく、どうしても「評価による部分」があります。
また、当然のことながら、出来るだけ治そう、出来るだけ事故前と同じような社会活動を送ろうと努力されますので、
周囲の理解を得ながら「仕事を続けられたり、日常生活を送られたり」しておられることも多々あります。
弁護士個人としては、「保険会社の担当者や保険会社側弁護士の大事なご家族が、同じように、交通事故に遭い、高次脳機能障害になってしまった場合に、同じ主張ができるのか」と、憤りを覚えるところが多々ありますが、
現実問題として、保険会社側は、これらの点を捉えて、等級の引き下げを図ることがしばしばあります。
交通事故訴訟に慣れていない弁護士の場合、
保険会社の提示額を、簡単に上げられると考えがちの弁護士も見受けられますが、
高次脳機能障害事案の場合、
安易に増額できるものと考えて訴訟に踏み切り、
丁寧な主張立証活動をしないと、足をすくわれることになる可能性がありますので、注意が必要と思います。