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交通事故をめぐる諸問題③~示談契約後の介護サービスの負担

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【問題意識】
交通事故等の第三者による不法行為の場合、被害者に給付を行った社会保険は、加害者に求償できます。
 
例えば、交通事故で重傷を負った被害者様が介護保険を利用することになってしまった場合、介護保険は、加害者に対して、後日、かかったお金を請求することになります。
 
では、被害者と加害者側(保険会社側)が示談解決に至った場合、示談後の介護サービスの金銭的負担は、どうなるのでしょうか?
 
 
【稲葉弁護士の見解】
この問題は、これまであまり認識されてこなかったように思われますので、私的見解となりますが(下記記事に基づいて示談をした結果、不都合が生じても、法的な責任は負えません。)、示談後の介護サービスについては、下記のように考えます。

示談の中で、
・介護分の賠償額が明確にされている場合→介護分の賠償額までは被害者が負担
・介護分の賠償額が明確にされていない場合→示談金額を限度として、市町村と被害者が協議して被害者の負担分を定める
・社会保険からの求償を除外して示談がなされた場合→加害者側が負担
 
稲葉弁護士の見解の根拠として、下記法文・事務連絡・裁判例をご紹介します(あくまで私見です。)。
 
 
【介護保険法の規定】
(損害賠償請求権)
第21条 市町村は、給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2 前項に規定する場合において、保険給付を受けるべき者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、市町村は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる。
3 (略)
 
 
【厚生労働省老健局介護保険計画課による、平成28年3月31日付け事務連絡「第三者行為による保険給付と損害賠償請求権に係るQ&Aの改正について」】
「(問5)示談が成立した後は、どのように保険給付を実施すべきか。」
「(答)示談が成立した場合、損害賠償請求権は、この示談金の価額が限度となり、その後、これを超える保険給付がある場合であっても、請求権を代位取得することはできない。また、示談金を受けたときは、その後の介護サービスについては、市町村は、法第21条2項の規定により当該示談金の価額を限度として、給付が免責されることとなり、示談金を超える金額については保険給付を行わなければならないこととなる。」
 注:法第21条2項とは、介護保険法21条2項。

「(問6)示談の内容によって、免責される保険給付の範囲はどのように変わるのか。」
「(答)示談において介護分の賠償額が明確にされている場合(※)には、介護保険サービスの総額(保険給付分と自己負担分の総額)が賠償額に達するまで給付の責を免れることとなる。一方、示談において介護分の賠償額が明確にされていない場合には、市町村と被保険者との個別の協議によることとなってしまうことから(以下略)」
「(※)以下のような示談が考えられる。」「示談額○○円 うち将来の介護費用○○円(サービス月額(10割分)○○円×12×平均余命○年」
 
 
【参考裁判例:大阪高等裁判所平成8年5月30日判決】
代理人弁護士間で行われた示談について、
・既払いの治療費について「別途社保求償552万8332円支払済」と記載した案を提示していたこと
・上記提示額を基礎に交渉が行われ、提示額に約300万円を加算した6200万円で示談が成立したこと
・被害者代理人弁護士が、被害者が現に入院してリハビリテーションを受けており、将来にわたっても、この状態が継続して健康保険から継続的給付がなされ、自己負担分以外の治療費の求償は、将来分についても従前どおりなされるものと考えて交渉を進めていたこと
などの認定された事実関係から、
双方代理人とも、症状固定後も求償があることを前提に、求償を除外して示談契約に至ったものと認定した。
 
その結果、
健康保険組合から加害者に対して行われた求償請求に対し、当事者間の示談契約の効力が及ばないとした。

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