Solution to Traffic Accidents交通事故解決ガイド

交通事故の損害賠償実務②「自賠責保険金等を先行受領した場合の充当計算~意外にも被害者側に有利な計算方法を採用している弁護士は少数派のようです。」

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【従前の実務における計算方法】
交通事故事件において、自賠責保険に被害者請求を行い、損害賠償額の一部先払いとして、自賠責保険金を受領することがしばしばあると思われます。
 
また、
交通事故の損害賠償金については、「法律上、年5%ないし3%の遅延損害金が発生」します。
示談の場合には、実務上、保険会社から遅延損害金が支払われることはほとんどないので、あまり意識することはないかもしれませんが、訴訟になった場合は、訴状において、「交通事故発生日からの遅延損害金も請求する」のが通常です。

判決になった場合は、法律上、当然に遅延損害金が付されますし、
訴訟上の和解で解決する場合も、交通事故事件の場合は、弁護士費用相当額や遅延損害金を考慮した「調整金」という名目のお金が付加されることが多いです。
(ちなみに、稲葉弁護士の経験では、東京地方裁判所交通部よりも、熊本地方裁判所のほうが、訴訟上の和解で解決する場合の調整金は、多めに計算されているように思います。)
 
ここで、かつては、
先行回収した自賠責保険金は、損害賠償金の一部先払いとして、賠償総額から控除して請求することが一般的でした。
 
もう少し詳しく言うと、
「弁護士費用を除く賠償総額から自賠責損害賠償額を控除し、これに弁護士費用を加算した額を請求元本とし、遅延損害金の起算日を事故日とする方法」(旧・計算方法と便宜的に言います。)
で計算することが一般的でした。

普通に考えれば、これが当たり前の計算方法と思われるかもしれません。 
 

【最高裁判決と「より被害者側に有利な」計算方法~いなば法律事務所の扱い】
この点、
最高裁判所平成16年12月20日判決が、民法491条1項の法定充当の定めに従い、自賠責損害賠償額を、事故時から自賠責損害賠償額の受領日までの遅延損害金に充当することを是認していることに鑑み、
 
いなば法律事務所では、
基本的に、自賠責保険金を先行回収した場合、賠償総額について自賠責保険金を受領した日までの遅延損害金を計算して、自賠責保険金は遅延損害金から先に充当する計算方法を採っています。
 
もう少し詳しく言うと、
「弁護士費用を除く賠償総額に対する自賠責損害賠償額受領日までの遅延損害金を計算し、『賠償総額+(賠償総額に対する)遅延損害金-自賠責損害賠償額等』を請求元本とし、遅延損害金の起算日を自賠責損害賠償額受領日の翌日とする。
弁護士費用については別途請求元本とし、これについては遅延損害金の起算日を事故日とする方法」(新・計算方法と便宜的に言います。)
を採用しています。
 
というのも、こちらの計算方法のほうが、「被害者様にとって貰える金額が増えて有利だから」です。
 
 
【交通事故の書籍では何と書かれているか?】
例えば、
公益財団法人・日弁連交通事故相談センター東京支部編集の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)では、
上記最高裁判所判決がなされた後では、従前の実務の計算方法では過少請求となる虞があるので注意すべき
旨が書かれています。
したがって、ほとんどの法律事務所では、自賠責保険金は確定遅延損害金から充当する計算方法(いなば法律事務所と同じ計算方法)ないしはそれに類する計算方法を採用しているのではないかと考えていました。
 
 
【熊本地方裁判所における現状~意外にも被害者側に有利な計算方法を採用している弁護士は少数派のようです】
ところが、令和2年12月ころ、熊本地方裁判所の裁判官から伺ったところでは、
「新・計算方法ないしはそれに類する計算方法を採用している訴状は、肌感覚で1割程度にとどまる。残りの9割は、旧・計算方法を採用して計算している。もちろん、新・計算方法を採用して請求している訴状には、そういう計算方法を主張しているものとして、きちんと対応する。」旨のことでした。

実務への反映が思ったよりも進んでいないことに、少々、驚かされました。

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