Solution to Traffic Accidents交通事故解決ガイド

相手方が任意保険に加入していない交通事故①~破産法253条1項3号の検討

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【問題意識】
熊本県内を中心とした交通事故のご相談をお受けしていて、相手方が任意保険に加入していない、という交通事故がしばしばあります。
この点、相手方が自己破産をして、免責許可決定を受けた場合、相手方にどこまで追及できるのでしょうか?
なお、無保険車との交通事故でも十分な保険金の支払を受けられる保険に、被害者側が加入しているケースでは、相手方に対する感情は別として、金銭的には、この問題はクリアできます。
 
 
【問題となる法律の規定】
破産法253条1項 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
3号 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
 
 
【弁護士の意見】
相手方が免責決定を得た場合でも、人身事故(「人の生命又は身体を害する」に該当する)の場合、破産法253条1項3号の「重大な過失」による損害と言えれば、相手方への請求が認められると思われます。
 
しかし、裁判例を検討するに、現実的には、
・ 免責決定がある以上、請求が認められることは難しく、
・ 例外的に請求認容を受けるには、下記の裁判例を参考に、交通事故の態様を具体的に主張立証して、ほとんど故意に近いという裁判所の認定を導いていく必要がある、
と思います。
(個人的には、裁判所の認定はいささか厳し過ぎ、被害者保護に欠けるのではないかと思いますし、社会正義に照らして、立法などで逃げ得を許さない対策を講じるべきと思います。)
 
なお、免責決定があるということは、相手方にあまり財産はないでしょうから、遺産相続などにより新たに財産を得た場合は別として、例えば、少しずつ、給与から回収するといった方針になるかと思います。
 
 
【加害者の免責を認めなかった裁判例】
(東京地方裁判所平成28年11月30日判決)
問題となった交通事故
・自転車(加害者)vs歩行者(被害者)
・自転車通行可の歩行者優先歩道
・歩行者が対向してきた自転車に衝突された
・自転車は時速約25~30kmで走行
・夜間かつ自転車が無灯火
 
→裁判所の判断
「本件事故に係る被告の過失は、故意に比肩する程度に重い過失であって・・・重過失と認めるのが相当である。したがって、本件事故により生じた原告の被告に対する損害賠償請求権が、本件免責許可決定に基づき免責されることはない」
 
 
【加害者の免責を認めた裁判例】
(大阪地方裁判所平成28年2月25日判決)
問題となった交通事故
(※無保険車傷害保険に基づき、被害者に保険金を支払った保険会社が加害者に求償した事故)
・自動車(加害者)vs自転車(被害者)
・事故現場前方の見通しは良好
・加害者はロールパンをちぎって口に入れながら運転
・時速約40~50kmで走行
・自動車が赤信号で進行したところ、青色信号に従って横断した自転車の側面に衝突
・1つ先の交差点の青色信号をこの交差点の信号表示と見誤ったと加害者が主張
・加害者は以前に信号違反で検挙された経歴あり(赤信号で停止していたところ、対面信号が青信号に変わっていないのに、交差道路の信号が赤に変わったため発進)
 
→裁判所の判断
破産法253条1項3「号にいう『重大な過失』とは、当該過失が故意に比肩する程度に悪質な場合を指すと解すべきである。・・・被告の上記過失は、本件事故のような類型で通常想定されている前方不注視の程度を超えていることは否定できない」が「故意に比肩する程度に悪質な過失に当たるとは認められない。」「被告に対する損害賠償請求権は、破産法253条1項3号の非免責債権には当たらない」(ので免責される)
 
 
(東京地方裁判所平成24年5月23日判決)
無共済車傷害条項により共済金を支払った共済側からの求償金請求事件。
飲酒・無免許で赤信号無視により交通事故を起こしたバイクの同乗者が破産免責決定を受けたケースで、赤信号無視は飲酒運転や無免許運転の直接の原因ではなく、同乗者は運転者に停止を繰り返し求めているから、同乗者について、破産法253条1項3号でいうところの故意又は重大な過失は認められないとした。
 
(名古屋地方裁判所平成19年9月14日判決)
加害者(車)がセンターラインをオーバーして、被害者の車に衝突した交通事故のケースで、被害者にとって避けられない事故で、加害者に一方的過失があるとしたが、「非免責債権は破産の免責の効果の例外となるものであるから、破産法253条1項3号に規定する重大な過失とは、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解するのが相当であり」加害者の過失は「前方不注意で一方的過失ではあるものの、ほとんど故意に近い著しい過失とまではいえない」として、被害者遺族ほかの請求を棄却した。


【参考:物的損害について、加害者の免責を認めた裁判例】
(名古屋地方裁判所平成20年4月18日判決)
ビール大瓶3本程度と焼酎数杯を飲酒後に車を運転したところ、進路前方に停止していた車に衝突直前まで気が付かず交通事故を起こしたケースで、免責許可決定により履行責任を免れていると認定した。
なお、人身損害ではないので、破産法253条1項本文により、責任を免れていると認定している。

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